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くも膜下出血

公開日: 2021-06-21
更新日: 2023-12-18

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工藤 陽平 医師

くも膜下出血とは

脳は外側から硬膜→くも膜→軟膜の順で覆われています。この3つの膜のうち、「くも膜」と「軟膜」の隙間にある「くも膜下」で出血が起きた状態です。原因や出血の程度にもよりますが、死亡率が高く、後遺症もなく以前と同じような生活に戻れるケースは3割に満たないとされています。

原因

多くの場合は、脳動脈瘤と呼ばれる、脳の血管にできたコブ状のふくらみ(瘤)が突然破裂して出血することで起こります。小さい脳動脈瘤であれば、1年以内にくも膜下出血を起こす可能性は1%未満とされています。しかし、時間とともに脳動脈瘤が大きくなる場合や形状が悪い場合は、出血のリスクが高くなります。そのため、脳動脈瘤が見つかった場合は、定期的に検査を受けることが推奨されます。
 
脳動脈瘤ができる原因はよくわかっていませんが、リスク要因としては、以下のようなものがあります。
 
〇 リスク要因

  • 加齢
  • 高血圧
  • 喫煙
  • 多量飲酒
  • 家系内にくも膜下出血を起こした人がいる

など
 
脳動脈瘤の破裂以外にも、血管の奇形や頭部への強い衝撃なども原因となることがあります。

症状

特徴的な症状は、これまでに経験したことがないような激しい頭痛が突然起こることです。「突然バットで殴られたような痛み」という表現をされることがよくあります。そのほか、主な症状には以下のようなものがあります。
 
〇 主な症状

  • 突然の激しい頭痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • けいれん
  • 意識が朦朧とする
  • 意識を失う

など
 
このような症状があるなど、くも膜下出血が疑われる場合は、救急車を呼ぶなどして至急、専門の医療機関を受診しましょう。

検査・診断

問診や診察で症状の有無を確認します。くも膜下出血の疑いがあれば、まずはCT検査で脳の画像検査を行います。CT検査で出血の状態がわかりにくかった場合は、さらにMRI検査による追加の画像検査や、腰から注射針を刺して髄液を採取する髄液検査で出血の有無を確認することもあります。診断が確定した後は、出血の原因や場所を確認するために、血管の状態を映し出す画像検査を行います。これらの検査には、造影CT検査やカテーテルによる脳血管撮影検査などがあります。

治療・治療後の注意

原因や出血の状態によって異なります。主な原因である脳動脈瘤の破裂による出血の場合には、再破裂を防ぐため外科的治療が行われます。代表的なものとして、クリッピング術とコイル塞栓術の2種類があり、脳動脈瘤の形状や大きさ、破裂した場所などによって使い分けます。どちらの方法も、脳動脈瘤内へ血液が流れないようにすることで、再破裂を防ぎます。

クリッピング術

頭部を切開して行う開頭手術です。脳動脈瘤を直接クリップで挟み、血液の流れを止めます。

コイル塞栓術

足の付け根の血管から脳動脈瘤までカテーテル(細い管)を挿入します。そこから金属の糸(コイル)を挿入し、脳動脈瘤に詰めて血液の流入を防ぎます。
 
このような手術のほかに、血圧や心拍などの循環機能の状態や呼吸の状態など、慎重な全身管理も必要です。

予防

主な原因である脳動脈瘤ができるリスク要因には、高血圧や喫煙、多量飲酒など、生活習慣と密接に関係していることが多くあります。そのため、血圧のコントロールや禁煙、適度な飲酒など、これらの改善や生活習慣を整えることが予防につながります。
 
また、脳動脈瘤を破裂する前に見つけて治療を行うことも有効です。脳動脈瘤ができるリスク要因と関連することが多い場合は、脳ドックなど、脳の検査を受けるのもよいでしょう。

医師紹介

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工藤 陽平 医師
2003年 聖マリアンナ医科大学卒業

2003年 聖マリアンナ医科大学病院、2004年 西島病院(2009年より救急診療部副部長、2010年より救急診療部部長)、2015年 三友堂病院(2015年より脳神経外科科長、2016年より救急部(HCU)部長)、2023年 三愛会総合病院。脳神経外科専門医(日本脳神経外科学会)、脳血管内治療専門医(日本脳神経血管内治療学会)、脳卒中専門医(日本脳卒中学会)、認定医(日本脊髄外科学会)、脊椎脊髄外科専門医(日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会)、救急科専門医(日本救急医学会)、高気圧医学専門医(日本高気圧環境・潜水医学会)、認定産業医(日本医師会)。専門分野は脳卒中、血管内治療、救急診療。