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男性更年期障害かも?:【医師監修】「集中力の低下」「やる気がでない」「イライラ」

公開日: 2016-08-26
更新日: 2016-08-26
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加齢に伴って心身に変調をきたす更年期障害は、長らく女性特有の症状のように思われてきましたが、近年、男性にも更年期障害があることが明らかになってきました。
しかし、女性の更年期ほどにはまだ認知されていないことも多く、治療が遅れることにより、症状が重くなったり長く続いたりする場合があります。また、周囲の理解が得にくいため、精神的につらい状況が続きます。
男性更年期障害について、本人や周りの人が理解することは、肉体的にも精神的にも豊かな老後を迎えるためにとても大切なことなのです。

医師紹介

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菅原 正弘院長
医学博士
日本内科学会評議員
日本リウマチ学会評議員・専門医
日本糖尿病学会学術評議員・専門医
日本消化器内視鏡学会専門医

男性更年期障害とはどんな病気?

男性更年期障害ってどんな病気

発症時期は40代の中頃から50代前半が最も多く、うつや集中力の低下などの精神的症状、ほてりや筋肉の衰えなどの身体的症状、男性機能の衰えなどの性機能関連症状があらわれる疾患です。
男性の更年期障害は、加齢による男性ホルモン(テストステロン)の低下が発症に大きく関わっていることがわかっています。それに加えて仕事上のストレスや肥満、運動不足なども間接的要因としてあげられます。

男性更年期障害は年齢層が広く、症状が長期間続くのが特徴

女性の更年期は一般的に閉経期をはさんだ数年間といわれていますが、男性更年期障害は40代で発症してから70代まで長期間つらい思いをすることもあります。さらに、60~70代まで発症の可能性もあるのです。
しかし、多くの男性は更年期障害を発症していても病院に行きません。実際に男性の更年期障害の患者で病院を受診している人は全体の2~3割程度だと言われています。

実際に男性更年期障害の患者さんを診療したことがある医師に独自でアンケートを実施したところ、男性更年期障害の患者さんを診療したことがある医師の7割以上が、症状を感じる男性の内、実際に医療機関を受診する患者の割合は2割未満と考えられると回答しました。

男性更年期障害の症状を感じる人のうち、医療機関を受診する割合は?

男性更年期障害の症状

男性の更年期障害の症状は主に(1)精神・神経症状(2)身体症状(3)性機能関連症状の3つに分けられます。3つの症状が個別にあらわれることは少なく、多くの場合、複合的にあらわれます。

  1. 精神・神経症状
    うつ症状(不安・イライラ・無気力・意欲がなくなるなど)、集中力の低下、不眠などがあげられます。
  2. 身体症状
    ほてり、のぼせ、動悸、筋力の衰え、異常発汗、筋肉痛、関節痛、腰痛、頻尿などの症状があらわれます。
  3. 性機能関連症状
    ED(勃起不全)や射精障害、性欲減退、オルガズム障害などがあげられます。

前述の独自アンケートでも、男性更年期障害の代表的な症状として3割以上の医師が、「無気力、やる気がない」「怒りやすく、イライラする」「集中力が低下している」「性欲が低下している」「寝つきが悪い、眠りが浅い」を選択しました。

さらに、30代から60代の一般男性にもアンケートを実施、現在自身で感じている症状を聞いたところ、2割前後の男性が、同じ症状を感じていることがわかりました。

男性更年期障害の代表的な症状

ただし、男性ホルモンの分泌量には個人差があり、分泌量の減少の仕方も人それぞれです。そのため症状にも個人差があり、ほとんど症状があらわれない人もいれば、日常生活に支障があるほど重い症状の人もいます。

男性更年期障害の原因:主な原因は「加齢」と「ストレス」

女性の場合と同じく、男性更年期の原因はホルモンのバランスにあります。ホルモンの中でも、女性は卵巣ホルモンの「エストロゲン」の減少が、男性は精巣ホルモンの「テストステロン」の減少が、更年期障害の主な原因になっています。
ホルモンは免疫と自律神経の、二つの大きな働きをコントロールしています。ホルモンの減少で自律神経の働きが乱れることによって、動悸やほてり、うつなどの症状があらわれます。

また、女性の更年期障害と異なり、男性更年期障害の原因として「ストレス」が大きく関わっているといわれています。上司・部下との関係や昇進などの仕事上のストレス、家族とのコミュニケーションがうまく取れないなどの家庭でのストレスがきっかけとなり、男性更年期の症状をより重いものにしていると考えられています。

さらに、直接的な原因ではありませんが、肥満や運動不足なども要因としてあげられます。

男性更年期障害セルフチェック

何もやる気がしない、朝の目覚めがスッキリしない、身体がだるいなどの症状がある場合には、更年期障害の可能性があります。
下記項目に2つ以上の該当があった人は、一度病院を受診して検査をしましょう。

男性更年期障害セルフチェック

□ 総合的に調子が思わしくない
□ 関節や筋肉の痛み
□ ひどい発汗
□ 睡眠の悩み
□ よく眠くなる、しばしば疲れを感じる
□ いらいらする
□ 神経質になった
□ 不安感
□ 体の疲労や行動力の減退
□ 筋力の低下
□ 憂うつな気分
□ 絶頂期は過ぎたと感じる
□ 力尽きた、どん底にいると感じる
□ ひげの伸びが遅くなった
□ 性的能力の衰え
□ 早朝勃起(朝立ち)の回数の減少
□ 性欲の低下
出典:日本泌尿器科学会ホームページより

どんな検査をするの?何科を受診すればよい?

男性更年期障害の疑いを持ったら、かかりつけ医に相談しましょう。かかりつけの病院がない場合には、内科・泌尿器科を受診しましょう。最近では、更年期障害外来の設立も増えてきたので、近くに専門科がある場合は、そちらを受診するとよいでしょう。
検査は主に、カウンセリングやチェックのためのアンケート記入、テストステロン値を測るための血液検査などが行われます。
血中テストステロン値は、一般的に11.8ピコグラム以上が正常とされていて、それ以下になると男性更年期障害が疑われます。そして8.5ピコグラム以下になると、ホルモン補充療法などの治療を受けることが推奨されます。

男性更年期障害の治療方法:一般的な治療は「ホルモン補充療法」

検査の結果を踏まえて、男性更年期障害と診断を受けたら治療に入ります。
治療は、減少した男性ホルモンを直接補充するホルモン療法、男性ホルモン減少の要因の一つであるストレスをカウンセリングによって改善する方法、漢方薬、勃起機能低下を改善する勃起改善薬などがあり、それぞれを組み合わせて治療していく場合もあります。いずれの治療も定期的に通院をして、時間をかけて治療を続けることが重要です。

◆ホルモン補充療法
ホルモン補充療法とは、減少している男性ホルモンを注射で補う治療法です。40才以上で、男性更年期障害の症状があり、血中のテストステロンの活性値(遊離テストステロン)が基準値より低い人が適応となります。また、前立腺がん治療中、重度の前立腺肥大の人、重度の肝機能障害のある人、重度の睡眠時無呼吸症候群の人はこの治療を受けることができません。 効果には個人差があるものの、治療開始後3~4ヶ月が経つと改善が見られる患者さんが多く、1年たてば以前と同じくらいにまで元気になる人が多いようです。
◆カウンセリング
更年期障害の症状で不眠や気分の落ち込みなど、メンタル面の不調が中心の場合、睡眠導入剤や抗うつ剤・抗不安剤などの薬の処方や、カウンセリングによる治療を行います。 カウンセリングによって「頑張らなくても良いんだ」、「無理をしなくても大丈夫」と気付くだけでも症状が軽減することが期待できます。
◆漢方薬
症状によって適切な漢方薬が処方されます。漢方薬はホルモン補充療法にくらべて効き目は穏やかなため、効果を感じるまでには2~3ヶ月ほどかかりますが、全体の約6~7割の人に効果がみられるといわれています。
◆勃起改善薬
男性更年期障害の方の多くがED(勃起不全)を合併しています。勃起改善薬を適切に服用することで、EDの改善に効果がみられます。ただし、偽物の勃起改善薬も多く存在するため、医師の処方による薬を使用しましょう。

男性更年期障害を乗り切るために・・・「ストレスをためない」「生活習慣の改善」が重要

ガッツポーズをする男性

更年期障害の克服への道のりとして大切なのはストレスをためないことです。仕事や家庭でのストレスを発散できるような、趣味や生きがいを見つけて楽しむ心の余裕を持ちましょう。
生活においてはバランスのよい食事と適度な運動が欠かせません。

◆男性更年期障害の改善におすすめの食事
和食中心のバランスの取れた食事を心がけましょう。魚や大豆製品から良質なタンパク質を補給し、海藻や野菜でビタミンを摂れる和食は男性更年期を乗り切る助けになります。また、納豆、オクラ、山芋といった和食に多いネバネバの食品には男性機能回復効果が期待できます。
◆男性更年期障害の改善におすすめの運動
筋肉をきたえる運動はテストステロンの分泌を活発にするといわれています。腹筋、腕立て、スクワットなどの筋力トレーニングや、ウォーキングや水泳などの有酸素運動、ストレッチなどをする習慣を持ちましょう。

放っておくと、認知機能や身体機能が低下し、うつ、メタボ、骨折、生活習慣病のリスクが高くなるともいわれている男性更年期障害。自分ひとりで更年期障害について悩み、長く悩んでしまったために症状がひどくなるよりも、まずは病院の医師に相談することをオススメします。

独自アンケートの結果詳細は、病院なび特設ページに公開しています。
→今まで「歳のせい」だと感じていた症状は、男性の更年期障害である可能性も

※当コラムは東京内科医会のご協力によって作成されています。

東京内科医会は、常に最新の医学知識を学び、最良の医療を実践する魅力を持った何かを主体に、診療を行っている医師の集まりです。