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子どもに多い水いぼ(伝染性軟属腫) 【医師監修】 プールは入れる 治療・薬 自分で対処はリスクがあります

公開日: 2019-10-28
更新日: 2019-10-28
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水いぼは、ウイルス性の皮膚感染症です。水っぽくつやのあるいぼができることから、水いぼと呼ばれていますが、正式名称は伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)です。
子ども、特に免疫力が弱い幼児期やアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が弱い場合にかかりやすいとされています。
治療法はピンセットで取り除く方法などいくつかありますが、まだ確立されておらず、治療法によってメリット・デメリットもあるため、症状や状況に応じて医師とよく相談して決める必要があるでしょう。

医師紹介

高橋 系一の画像
高橋 系一医師
順天堂大学 医学部卒
日本小児科学会小児科専門医
日本小児神経学会小児神経専門医
日本てんかん学会専門医
学校法人 道灌山学園理事長

症状 - 皮膚が薄く擦れやすい部分にできやすい

手を取り合う子ども

〇 潜伏期間
2~7週間程度が多いですが、時には感染から何か月もたってから症状があらわれることがあります。

〇 水いぼの特徴
直径1~5mmほどの半球状に小さく盛り上がった形です。よく見ると中央が少しへこんでいます。

色は、やや赤みを帯びた白から肌とあまり変わらない色(常色)です。

水っぽくつやがあるため、水ぶくれ(水疱)のように見えることがありますが、水いぼの中身は、液体ではなく、ウイルスと皮膚の組織が混ざったチーズ状 または ワックス状の白っぽい塊です。

〇 水いぼができやすい場所
胴体、手足、わき、股などを中心に、皮膚が薄くこすれやすい部分にできやすいですが、手のひらと足の裏を除く全身にできる可能性があります。

〇 水いぼの痛み・かゆみ
水いぼ自体に痛みはありません。かゆみもないことがほとんどで、あっても軽度な場合が多いです。

なにかの拍子にかいてしまうと、そこからウイルスが広がり、周囲が湿疹のようになることがあります。そうなると、かゆみが増したり、さらにそこに水いぼができてしまいます。

かゆみがある場合や水いぼが気になったりしても水いぼをかかないように注意しましょう。

感染経路は「接触感染」 - 免疫・皮膚のバリア機能が弱いとかかりやすい

ウイルスのミニチュア

水いぼになる原因は、伝染性軟属腫ウイルスが皮膚に感染することです。感染経路は、接触感染と考えられています。

接触感染 :
皮膚と皮膚が直接触れたり、手指やものなどについたウイルスが皮膚内に侵入することで感染します。

さらに、水いぼは人にうつすだけでなく、自分自身の皮膚にも感染を広げてしまいます(自家接種)。水いぼをかいてつぶしたり、普段の生活の中で水いぼの中に潜んでいたウイルスが手につき、その手で触ったりかいたりした皮膚に次々にうつり増えていきます。
健康な皮膚であれば、表面にウイルスや細菌などの侵入を防ぐ角質層というバリアがあるので、皮膚の上面にウイルスがついただけでは感染する可能性は低いです。

しかし、皮膚表面が荒れていたり小さな傷がある場合は、その傷口からウイルスが侵入して感染しやすくなります。
そのため、免疫力や皮膚バリア機能が弱い以下のようなケースは、水いぼにかかりやすいとされています。

〇 水いぼにかかりやすいケース
・ 幼児から小学校低学年までの子ども
・ アトピー性皮膚炎
・ 乾燥肌

また、伝染性軟属腫ウイルスは一種類ではないため、水いぼに一度かかっても、別の種類のウイルスが原因となって、再び水いぼができることがあります。
一度感染したウイルスに対しては免疫を獲得するため、同じ種類のウイルスが原因で水いぼになることはほとんどありません。

乾燥肌やアトピー性皮膚炎の場合は特に注意!

乾燥肌やアトピー性皮膚炎の場合は、皮膚のバリア機能が弱く、水いぼに感染しやすいとされています。
さらに、水いぼにかかってしまったときは、乾燥肌やアトピーのかゆみで水いぼ部分もかき壊してしまい、自分自身の皮膚に感染を広げる自家接種のリスクも高くなります。
そのため、日ごろから十分な保湿と必要に応じて適切に薬を使用することで症状をコントロールし、健康な肌を保つことが大切です。爪は短く切り、できるだけ肌をかかない・傷つけないように気をつけましょう。
また、アトピー性皮膚炎の治療薬であるステロイドの塗り薬の副作用には、水いぼを悪化させる可能性があります。

しかし、これらの副作用が起きやすいかどうかは、皮膚の状態(アトピー性皮膚炎の重症度など)や、使用しているステロイド薬の強さ・量に関係します。軽度のアトピー性皮膚炎の治療で使用しているステロイド薬では、問題にならないことがほとんどです。

ステロイド薬を普段から使用しているときに水いぼになった場合は、薬の使用や今後の治療について、かかりつけ医に相談しましょう。

大人もかかる! 性的接触による感染に注意

基本的に免疫を獲得していることが多くかかりにくいとされていますが、大人でも水いぼができることはあります。
できやすい場所は基本的には子どもと同様です。しかし、大人の場合は陰部や太ももの内側にできる割合が多く、性行為による感染も多くみられます。
子どもと同様に、免疫力が低下しているときやアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が弱い場合にもかかりやすいです。

さらに状態によっては、免疫機能が働かなくなることで起こる免疫不全症や、免疫が弱っていることで起こる日和見感染症などを疑う必要があります。
治療の選択肢も子どもの場合と同じです。皮膚科を受診するのがよいでしょう。

さまざまな治療方法・薬…自然に治したほうがいい?

メリットとデメリット

水いぼは、特に治療をしなくても、健康であれば6か月から3年程度で免疫ができ、自然に治ります。しかし、自然治癒にかかる期間やたどる経過は個人差が大きく、いつ治るかを予測することは困難です。
また見た目の問題や自分自身の皮膚に感染を広げてしまう自家接種の可能性、他の人にうつしてしまう可能性などから、積極的に治療を選択する場合もあります。

治療方法にはいくつかの種類がありますが、現在のところ確立された方法はありません。年齢や性格、水いぼの数や場所、アトピー性皮膚炎の有無などを総合的に判断して、もっとも適切な治療を選ぶことになります。

子どもであれば小児科 もしくは 皮膚科、大人であれば皮膚科を受診し、治療について相談するのがよいでしょう。

ピンセット(トラコーマ鑷子)による摘除

水いぼを取り除く治療です。水いぼの数が少ないうちであれば、最も簡便で確実な方法です。

トラコーマ鑷子という、先が丸くなった水いぼ専用のピンセットで、水いぼの根元をはさみ、内容物の白い塊を取り出します
多少の痛みをともなうことが難点ですが、あらかじめ麻酔テープなどで局所麻酔をして痛みを軽減させることができます。

ただ、ベッド寝かされての処置や処置の際に抑えられたりすることに恐怖や不安を感じる場合には、ストレスがかかる治療法です。
また、取り除いた場所に跡が残ってしまうことがありますが、自然に治した場合でも跡は残ることがあります。

麻酔テープ(リドカインテープ):
テープ状の局所麻酔薬で、貼った個所の痛みを軽減します。

1枚がシート状(3cm×5cmほど)になっているため、水いぼの場合は取り除く水いぼの大きさにあわせて切って使用します。

適した大きさに切った麻酔テープを取り除く水いぼ部分に1時間ほど貼り、はがした直後に取り除く処置をします。

使用枚数が多くなると中毒を起こす可能性があるため、子どもの1回の水いぼ治療に使用できる枚数は2枚までです。

そのほかにも、頻度は少ないですが、麻酔薬へのアレルギー反応で、アナフィラキシーショックなどの重大な副作用を起こす可能性もあるので、用法・用量には十分注意が必要です。

外用療法

塗り薬を使う方法です。使われている薬には以下のようなものがあります。

〇 治療に使われている塗り薬

  • 硝酸銀溶液(劇薬)
  • イソジン(消毒薬)
  • トリクロロ酢酸
  • イミキモド
  • トレチノイン

など

さまざまな薬剤が試されていますが、今のところ科学的な根拠は確立されておらず、副作用や色素沈着などの問題もあるため慎重な検討が必要です。

飲み薬

漢方薬のヨクイニンが使われます。ハト麦から作られた粉薬です。
水いぼに対する作用や効果は、まだ科学的に確立されていませんが、皮膚に栄養を与え角質層の新陳代謝を促す効果があるとされており、いぼをはじめとした様々な皮膚疾患に使われることがあります。
小さい水いぼが多発しているときや取り除く治療(摘除)を希望しない場合に服用するとよいでしょう。

その他の治療法

液体窒素凍結療法 / 炭酸ガスレーザー / 電気焼灼法 など

完全に取り切れていないと再発することも…

取り除く治療(摘除)を選択した場合、水いぼの数が少なければ、1回の治療で完治することもありますが、完全に取り切れていない場合は、再発することがあります。
通院の頻度や回数などの治療期間は人によってさまざまですが、水いぼの数が多い場合は、3~6週間程の期間をあけながら、水いぼがなくなるまで治療を繰り返すことがあります。
また、潜伏期間にある水いぼもあるので、完治したかどうかは、時間の経過をみながら判断する必要があります。

自宅・自分での対処はリスクをともなう!

自宅や自分で水いぼを取り除くなどの処置をすることはリスクを伴います。
ウイルスが皮膚の他の部分について感染が広がったり、つぶした傷口から別の感染症にかかる二次感染を起こす危険があります。
また、そもそも水いぼではない可能性もあり、他の皮膚疾患を見落としかねません。
水いぼは数が少ない段階であれば治療の選択がしやすいこともあるので、水いぼを疑った場合は、自己判断で対処せず、数が少ない早めのうちに医療機関を受診することをお勧めします。
子どもの場合は小児科 もしくは 皮膚科、大人の場合は皮膚科を受診するのがよいでしょう。

保育園・幼稚園や学校への登園・登校の目安

登園する子ども

保育園や幼稚園、学校を休む必要はありません。水いぼは出席停止が必要な感染症ではありません。
ただし、感染した皮膚に直接触れると他の人にうつしてしまう可能性もあるため、露出する部分に水いぼがある場合は、服や包帯、絆創膏などで覆うようにしましょう。

プールやお風呂は入ってOK - 体に触れるものの共有はしない!

プールの水は塩素で消毒されているため、水を介してうつる可能性は非常に低いとされています。したがって、水いぼがあってもプールに入って問題はありません。
ただし、タオルや浮き輪、ビート版など、体に触れるものを介してうつることがあるため、そのようなものの共用はしないようにしましょう。
このような理由から、保育園や幼稚園、学校、スイミングスクールなどの施設によっては、プールに入れないなどの独自の基準を設けている場合もあるので確認してみましょう。

また、水いぼの治療直後で傷がある状態だと、傷口から別の感染症にかかる二次感染を起こす可能性があるため、治療当日のプールは避けたほうがよいでしょう。そのほか治療中のプールについては、かかりつけ医と相談しましょう。

もともと感染力の強いウイルスではないので、お風呂や温泉などでもうつる可能性は高くはなく、入っても問題ありません。プール同様、タオルなどの共用は避けたり皮膚と皮膚を密着させないようにするなどは気をつけるのがよいでしょう。

プールに入った場合は感染予防のため、しっかりとシャワーを浴び、手を洗いましょう。また、肌の状態を整えることも感染予防になるので、乾燥や荒れにつながりやすいプールやお風呂のあとはきちんと保湿をしましょう。

水いぼと似ている皮膚疾患

座る赤んぼう

水いぼと症状が似ている皮膚疾患には、以下のようなものがあります。

〇 水いぼと似ている皮膚疾患

など

特にとびひは、細菌性の皮膚感染症で、短時間のうちに急激に悪化することがあるため早めに受診、治療をするのがよいでしょう。
皮膚に気になる湿疹があらわれた場合は、自己判断をせずに医療機関を受診しましょう。