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心房中隔欠損症

公開日: 2016-09-13
更新日: 2024-04-24

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長谷川 望 院長

心房中隔欠損症とは

生まれつき心臓の形と機能に異常がある「先天性心疾患」のひとつです。先天性心疾患の中では比較的よくみられる疾患です。心臓には、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの空間があり、酸素をたくさん含んだ血液は左側(左心房、左心室)、酸素の少なくなった血液は右側(右心房、右心室)を流れています。この両方の血液が混ざらないように、左右は壁で仕切られていますが、そのうち右心房と左心房の間にある心房中隔という壁に、生まれつき穴があいている状態です。

原因

はっきりとした原因はわかっていません。染色体異常などの遺伝的な要因や、母体の生活習慣などの環境的な要因など、さまざまなことが影響して起こると考えられています。

症状

乳幼児期や小児期(15歳くらいまで)は、症状がないことがほとんどです。そのため、乳幼児健診や学校健診などで、心臓の雑音や、心電図、レントゲンで心臓が大きいなどの異常から見つかることが多いです。症状や穴の状態によっては、成人になるまで見つからないこともめずらしくありません。

症状があらわれる場合には、以下のようなものがあります。
 
〇 主な症状(子ども)

  • 母乳やミルクの飲みが悪い
  • 体重が増えない
  • 小柄
  • 疲れやすい
  • 動くと息切れしやすい
  • 風邪をひきやすい

など
 
いずれも一般的な症状なため、見逃されていることがありますが、治療をしないまま成長するとほとんどの場合でなんらかの症状があらわれます。主な症状には以下のようなものがあります。
 
〇 主な症状(成人)

  • 動いたときの息切れ
  • 呼吸困難
  • 動悸
  • 不整脈
  • 肺高血圧
  • 心不全

など

検査・診断

聴診による心臓の雑音や心電図、レントゲン検査などから心臓の疾患が疑われた場合は、心臓の超音波検査を行い、穴の有無や大きさ、合併症の有無などを確認します。さらに合併症が疑われる場合は、心臓の血管(冠動脈)に造影剤を注入して血管や血流の状態を確認するカテーテル検査が行われることがあります。

治療・治療後の注意

穴が小さい場合は自然に閉じることが多いため、ほとんどの場合は特別な治療はせずに経過観察をします。
 
穴が大きい場合や心不全の兆候がある場合、2歳以降になっても自然に閉じる傾向がない場合は、穴をふさぐ手術が行われます。小学校入学前までに手術が行われることが一般的です。
 
手術には、主に「カテーテル閉鎖術」「開胸手術」の2つの方法があります。どちらを選択するかは、穴の大きさや位置、合併症の有無などによって検討されます。
 
治療後は順調に経過することがほとんどで、その後も一定期間は薬の服用や経過観察が必要ですが、発達や発育は通常の子どもと同様と考えられています。

カテーテル閉鎖術

太ももの付け根の血管から細い管(カテーテル)を心臓まで挿入します。そのカテーテルから、穴をふさぐ器具を通し、その器具を穴にはめこみます。開胸手術に比べて心臓や身体への負担が少ないことから、主流になりつつある治療法です。

開胸手術

胸部と心臓を切開して、穴の開いている部分を縫い閉じる もしくは 膜状のパッチを縫い付けることで穴をふさぎます。心臓を止めて行うため、人工心肺を使用します。

予防

生まれつきの疾患(先天性疾患)であることに加え、原因もわかっていないため、特定の対策や予防方法はありません。

医師紹介

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長谷川 望 院長
東京慈恵会医科大学医学部卒業

東京慈恵会医科大学附属病院での勤務を経て、国立成育医療研究センターなどの小児医療専門の医療機関にて研磨を積む。現在は、実父が開業した高橋医院の院長を務め、練馬区内を中心とした保育園医や中学校医、企業産業医など、地域医療を担う。東京慈恵医科大学小児科学講座元非常勤講師。小児科専門医(日本小児科学会)、「子どもの心」相談医(日本小児科医会)、地域総合小児医療指導医(日本小児科医会)。専門分野は小児科一般、小児保健。