病院・薬局検索の病院なび

記事カテゴリ

はしか

公開日: 2016-09-07
更新日: 2021-03-30

医師紹介

吉田 明生 の画像
吉田 明生 院長

はしかとは

麻疹ウイルスに感染することによって起こる急性の全身感染症です。「はしか」の正式な名称は「麻疹(ましん)」です。
日本では2015年以降、はしか(麻疹)は「排除状態」であると認定されています。「排除状態」とは、国内に由来するはしか(麻疹)感染が3年以上確認されていないことを示します。しかし、これは日本での感染者が1人もいないということではありません。ウイルスが海外から持ち込まれることで、はしか(麻疹)の感染は毎年発生しています。

原因

感染経路は主に「空気感染」です。「飛沫感染」や「接触感染」によっても感染します。麻疹ウイルスは感染力がとても強く、免疫をもっていなければ、どんなに広くても同じ空間にいるだけで感染の可能性が非常に高いとされています。さらに、免疫をもっていない状態で感染すると、ほぼ100%発症します。

症状

麻疹ウイルスに感染してから10日~12日間の潜伏期間を経て発症します。その後、前駆期(カタル期)→発疹期→回復期の経過をたどり、重症化しなければ症状があらわれてから7日~10日で回復していきます。

【前駆期(カタル期)】 2日~4日間

〇主な症状


  • 風邪のような症状
  • (38℃前後の発熱 / 鼻水 / 咳 / くしゃみ / 倦怠感 など)
  • 結膜炎症状
  • (目の充血 / 目やに など)
  • 下痢や腹痛 (乳幼児の場合)
  • コプリック斑(頬の内側の粘膜にできる1mm程度の小さな白い斑点)


など
この時期の終わりころには、1℃程度熱が下がります。

【発疹期】 3日~5日間

多くの場合、再び39.5℃以上の高熱とともに、はしか(麻疹)特有の発疹が以下のような経過で身体全体にあらわれます。この発疹は、痛みはありませんが、場合によってはかゆみをともなうことがあります。

〇 発疹の経過


顔・耳の後ろ・首筋・おでこ
↓(翌日)
体幹部(胴体)・上腕
↓(2日後)
手足

【回復期】7日~9日間

  • 熱が下がる
  • 風邪のような症状が治まる
  • 発疹が退色する


全身状態が回復する時期です。赤い発疹は次第に色が薄くなり、黒ずんだ色素沈着となってしばらく残りますが、やがてこれも消えていきます。

合併症

はしか(麻疹)にはさまざまな合併症があり、感染者の約3割が合併症を起こすとされ、特に肺炎と脳炎は二大死因とされていています。また、最も多い合併症は中耳炎です。そのほかにも、クループ症候群、気管支炎などの合併症があります。

さらに、はしか(麻疹)患者の10万人に1人と、発生頻度はかなり低いとされていますが、死に至る重篤な合併症に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)があります。SSPEは、はしか(麻疹)にかかってから7年~10年の潜伏期間を経て、知能障害や性格変化、運動障害などがあらわれ、徐々に進行し、やがて昏睡状態となります。治療法は確立されておらず、難病指定を受けています。SSPEの予防は、唯一、はしか(麻疹)にかからないことであるため、予防接種を受けることがとても重要です。

検査・診断

問診や視診などの一般的な診察ではしか(麻疹)が疑われた場合は、さらに血液検査やウイルス検査、尿検査などを行い確定診断します。

治療・治療後の注意

特別な治療法はありません。高熱に対しては解熱剤を使うなど、つらい症状を和らげる対症療法となります。免疫力の回復には1か月程度かかることもあるため、その間、他の感染症にかからないように注意が必要です。

予防

麻疹ウイルスはとても小さく、感染力も非常に強いため、マスクや手洗いでは完全に予防することはできません。唯一の有効な予防法は、ワクチンの予防接種です。2回接種をすれば、ほとんどの場合で免疫を獲得でき、それを生涯持続させることができます。

医師紹介

吉田 明生 の画像
吉田 明生 院長
東北大学医学部卒業

小児医療を専門とする国立成育医療研究センターで幅広い経験を積む傍ら、アレルギー疾患の専門的な臨床・研究にも従事。その後、地域の中核病院でアレルギー専門外来のほか、新生児医療の経験などを経て、2020年に専門である小児科とアレルギー診療に力を入れた「もりやまこどもとアレルギークリニック」を開業。日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。