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結核

公開日: 2017-01-05
更新日: 2024-02-27

医師紹介

結核とは

結核菌という細菌の感染によって起こる感染症です。一般的には肺の内部で増えて、咳や痰、呼吸困難などの症状が出ることが多いですが、肺以外の腎臓や骨、脳など身体のあらゆる部分に影響を及ぼすことがあります。また、結核菌に感染した場合、必ずしもすぐに発症するわけではなく、体内に留まったのち再び活動を開始したときに発病します。感染をしても、発病していなければ他者に感染させることはありません。

原因

結核を発病している人が、結核菌を身体の外に出すことを「排菌」といいます。排菌している人の咳やくしゃみなどに含まれる結核菌を吸いこむ飛沫感染や、咳やくしゃみなどのしぶきの水分が蒸発して、空気中に漂った結核菌を吸い込む空気感染により感染します。手を握る、同じ食器を使う、などで感染することはありません。また、「感染しただけ」の状態であれば、他者にうつす心配はありません。
 
結核菌に「感染」したからといって、すべての人が「発病」するとは限りません。ほとんどの場合は、免疫機能によって封じ込められたままであり、一生発病しません。
 
発病する原因ははっきりとはわかっていませんが、体力の低下などによって免疫機能が低下すると、抑え込まれていた結核菌が再び活動をはじめ、発病しやすい状態になると考えられています。感染してから2年くらいのうちに発病することが多いとされていますが、感染後の数年~数十年後に発病することもあります。一方で、赤ちゃんや持病があるなど、感染初期に十分な免疫機能がない場合は、感染後すぐに発病することがあります。
 
発病して症状が進むと、咳やくしゃみ、痰に菌が含まれ、排菌されるようになります。発病していても、症状が軽い場合や抗結核薬を飲んでいる場合などで、「排菌していない状態」であれば、他者に感染させる心配はありません。

症状

主な症状は以下の通りです。風邪の症状と似ていますが、結核の場合、症状が2週間以上続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返す特徴があります。

〇 主な症状

  • 痰、血痰(血が混ざった痰)
  • 発熱
  • 倦怠感
  • 呼吸困難
  • 体重減少
  • 食欲低下

など

検査・診断

発病が疑われる場合は、胸部のレントゲン検査やCT検査などの画像検査のほか、血液検査、痰を採取して排菌の有無を調べる喀痰(かくたん)検査などを行います。
 
また、発病者との接触があったなどで、感染の有無を調べるには、血液を採取して行うインターフェロンγ遊離試験(IGRA検査)を行います。

治療・治療後の注意

飲み薬を使った薬物治療が基本となります。結核に有効な数種類の薬(抗結核薬など)を6か月以上継続して使用します。
 
排菌量が多いなど、結核菌を他者へ感染させてしまう可能性が高い場合は、入院での治療になります。入院期間は平均2か月程度です。結核菌が排菌されなくなり、他者へ感染させる恐れがないことが確認されると通院に切り替え、治療を継続します。
 
途中で薬の服用をやめてしまうと、再発する可能性が高くなる、服用を再開した際に薬が効きにくくなる または 効かなくなることがあります。そのため、特に薬の服用は医師の指示に従い、適切に治療を受けるようにしましょう。

予防

小児は、BCGワクチンの接種が有効です。接種後の予防効果は約10年~15年程度です。特に乳児時期の結核は重症化しやすいため、1歳未満での定期予防接種を受けることが推奨されます。
 
また、免疫機能が低下すると、発病しやすい状態になると考えられるため、健康的な食事習慣や適度な運動、十分な休息や睡眠など、できるだけ生活習慣を整え、免疫機能の維持につなげましょう。

医師紹介

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山口 敏行 医師
1994年 長崎大学医学部医学科卒業

2004年 埼玉医科大学感染症科・感染制御科講師、2018年 東日本成人矯正医療センター感染制御部門長、2022年 東京慈恵会医科大学感染制御科教授、同附属柏病院感染制御部診療副部長。総合内科専門医(日本内科学会)、呼吸器専門医(日本呼吸器学会)、感染症専門医(日本感染症学会)。専門分野は呼吸器感染症、HIV感染症、耐性菌感染症、感染性廃棄物、矯正医療。